遺言書作成サポート
遺言でできること
遺言(「ゆいごん」または「いごん」)というと、「家族仲良く…」とか、「お母さんを大切に…」などといった言葉をイメージされる方がいるかもしれませんが、遺言書に書いて法律上の効力が認められることは法律で決められています。
1.身分上の行為
- 子の認知
- 未成年者の後見人の指定
- 未成年者の後見監督人の指定
2.相続に関する事項
- 推定相続人の廃除またはその取り消し
- 相続分の指定または指定の委託
- 特別受益者の持ち戻しの免除
- 遺産分割方法の指定または指定の委託
- 遺産分割の禁止
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺言執行者の指定または指定の委託
- 遺留分減殺方法の指定
3.財産処分に関する事項
- 遺贈
- 一般財団法人設立の意思表示
- 信託の設定
「家族仲良く・・・」とか、「お母さんを大切に・・・」と書いたとしても、その部分に法律上の拘束力があるわけではなく、あくまでも以上に記載した内容に限って法律上の効力が認められるのですが、ある相続人にとって有利な(別の相続人にとっては不利な)内容の遺言を残す場合には、どうしてこのような内容の遺言を書いたのかなど皆様のお気持ちを残したい、また、このようなお気持ちも書いた方が相続人も納得しやすいという場合もあるかと思います。
そのような場合には「付言事項」として、財産とは関係のない皆様のお気持ちを遺言書の中に残すこともできます。
遺言の種類
民法には、遺言の種類として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の普通方式による遺言、また、死期が迫っているなど特殊な状況下にある場合に利用する4種類の特別方式による遺言、全部で7種類の遺言が定められています。
遺言書は偽造・変造防止のため、民法に厳格な方式が定められており、この規定にしたがって作成しなければ無効な遺言書となってしまいます。
ここでは、一般的な普通方式による遺言書についてご説明します。
自筆証書遺言
遺言者本人が自らの手で全文、日付を書き、署名・押印をして作成する遺言。
- メリット
-
- 証人や公証人の関与が不要であり、いつでも、どこでも好きなときに自分一人で作成でき、費用もかかりません。
- 遺言書の存在そのものを秘密にすることができます。
- デメリット
-
- 形式的な不備により遺言書が無効になるおそれがあります。
- 全文を自らの手で書くことが必要なため、文字を書けない人には作成できません。
- 遺言書を残した方が亡くなった場合には、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
- 遺言書をきちんと管理しておかないと紛失したり、偽造、変造されたりするおそれがあります。
公正証書遺言
公証役場で2人以上の証人の立ち会いのもとで下記のとおり作成する遺言。
作成の流れ
遺言者本人が遺言の内容を口述
↓
公証人がそれを筆記
↓
遺言者および証人2人に読み聞かせ
↓
遺言者および証人2人が署名押印
- メリット
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- 原本が公証役場で保管されるため、紛失、偽造、変造のおそれがありません。
- 公証人が作成するため、法律上の不備がなく、家庭裁判所の検認手続きも不要です。
- 口がきけない人、耳が聞こえない人でも通訳人の関与で作成できます。
- デメリット
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- 公証役場に支払う手数料がかかります。
秘密証書遺言
あらかじめ作成し封印した遺言書を公証役場に持っていき、下記の方法で作成する遺言。
作成の流れ
遺言者本人が遺言書を作成(遺言書自体に署名押印が必要です。)
↓
遺言書を封書に入れて遺言書に押した印鑑で封印
↓
公証役場に持参し、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提示のうえ、自分の遺言書であること、また、その筆者の氏名・住所を申述
↓
公証人は、その遺言書を提出された日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名押印
- メリット
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- 封印後の遺言が公証されるので偽造、変造のおそれがありません。
- 署名押印の必要はありますが、全文を自らの手で書くことまでは求められていないため、署名以外の部分については代筆やワープロでの作成も可能です。
- 封印してから公証役場に持っていくので遺言の内容を秘密にできます。
- デメリット
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- 遺言書は遺言者が保管することとなるため紛失のおそれがあります。
- 公証役場に支払う手数料がかかります。
- 家庭裁判所の検認が必要です。
- 形式的な不備により遺言書が無効になるおそれがあります。
以上のようにそれぞれの遺言には、それぞれのメリット・デメリットがあり、どの方式を利用して遺言書を作成するかはご本人のお考え次第ですが、法的に有効な遺言を作成するためには、専門家が関与し、安全確実な公正証書遺言をお勧めいたします。
作成した遺言書を変更・撤回したいときはどうすればいいの?
書いてしまった遺言書は取り消すことができないと思ってらっしゃる方がいたらご安心ください。遺言書はいつでも変更したり撤回したりすることができます。
複数の遺言書があり、その内容が異なる場合には、内容の異なる部分については日付の新しい遺言書の内容が優先されることになっているため、遺言書を書いた後に内容を変更したいとご希望される場合には、そのときのお気持ちを再度遺言書として書き残せばいいのです。ただ、双方の遺言書のどちらが有効か問題になる可能性もありますので、「前の遺言を次のとおり変更する。」などと、変更した遺言書であることをはっきりしておかれることをお勧めいたします。
このとき、それぞれの遺言書がどの方式の遺言書であるかは問われません(その方式にしたがった有効な形式であることは必要です)ので、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもできます。
また、遺言書で変更・撤回しなくても、次のような場合には変更・撤回したものと扱われる場合があります。
- 遺言の内容と異なる処分などを行った場合
たとえば、Aが甲土地をBに遺贈するという遺言書を書いていた場合に、甲土地をCに売却した場合には、甲土地の遺贈に関する部分は遺言を撤回したものと扱われます。
- 遺言書自体や遺贈の目的物を破棄した場合
この場合には、破棄した部分については遺言を撤回したものと扱われます。
なお、公正証書で作成した遺言書はお手元にある正本や謄本を破棄しても、原本が公証役場に保管されておりますので、これだけでは破棄したことになりません。
遺言書の変更・撤回をご希望の場合は、新たに遺言書を作成し直してください。
当事務所に遺言書作成サポートを依頼するメリット
ご承知のとおり、遺言書はご本人の意思を書面に書き表したものであり、それを作成するにあたって当事務所が何をサポートしてくれるの?と思う方がいるかもしれませんが、公正証書遺言を作成しようとした場合、一般的には以下のような流れで手続きを行う必要があります。
必要書類の確認(公証役場)
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不動産登記簿謄本(法務局)や固定資産評価証明書(市区町村役場・都税事務所)の取り寄せ)
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戸籍謄本などの取り寄せ(市区町村役場)
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遺言書の内容を打ち合わせ(公証役場)
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証人2名の手配(推定相続人や遺贈を受ける方などは証人になることができません。)
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公証役場および証人2名と遺言書作成日程の調整
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遺言書の作成(公証役場)
当事務所に公正証書遺言の作成サポート業務をご依頼いただいた際には、当事務所が皆様と公証人の橋渡し役として皆様の意思を事前に公証人にお伝えし、皆様はこちらでは取り寄せることができない戸籍謄本などを取り寄せていただく以外は、作成当日に公証役場に来ていただくだけで済むことになります。(当事務所との間で、遺言書の内容についてのお打ち合わせが必要になりますが、お打ち合わせについては、こちらからご自宅に伺うことも可能です。)
皆様の意思を死後に確実に実現するために遺言書の作成をご検討されてはいかがでしょうか。